試験体No.4の記録映像
公開実験

試験体No.4の実験

2011年1月20日(木)、21日(金)に実施しました。足固め・石場建て、土塗り壁、2階建ての試験棟について、入力する地震波を変えての比較実験です。

なお、床荷重は錘で荷載しています。最終日の最後の実験では、床錘を一部撤去し、Mo低減による影響を見ます。

試験体No.1〜No.3は掛け替えのできる乾式土壁パネルでしたが、このNo.4は、伝統的な湿式土塗り壁です。(写真は荒壁塗りの様子。この後、中塗りで仕上げます)

壁配置


この試験体No.で4は、壁配置を偏心させてあります。

バランスのよい建物ほど、地震には強いものですが、わざわざ偏心させてあるのはなぜかというと、伝統構法の建物には、日当りのいい、庭に向いた南面は壁ではなく建具で内外を仕切った開放的な間取りで、逆の北面は壁が多いという、偏心した平面のケースがよくあり、伝統的な建物についての設計法を構築していくのに、偏心の度合いが、どの程度、建物の地震時のふるまいに影響するかを具体的に調べる必要があるからです。

いわゆる伝統構法の建物とはいえない総2階の建物にしているのも、今回は設計法構築のために必要なデータ取りを目標としているからです。設計法ができあがったあかつきには、その設計法を用いて、より伝統構法らしい建物をつくり、2012年度にこの同じ実験台にのせたいと考えています。

スケジュール

1/20(木)加振AA-2加振損傷限界検証BCJ-L1波 稀な地震動を、長辺方向で加振
A-3加振損傷限界検証BCJ-L1波 稀な地震動を、短辺方向で加振
A-4加振安全限界検証BCJ-L2波 極稀な地震動を、長辺方向で加振
A-5加振安全限界検証BCJ-L2波 極稀な地震動を、短辺方向で加振
1/21(金)加振BB-2加振損傷限界検証BCJ-L1波 稀な地震動を、長辺方向で加振
B-3加振損傷限界検証BCJ-L1波 稀な地震動を、短辺方向で加振
B-4加振崩壊限界検証JMA 神戸波 巨大な地震動を、3方向で加振
加振CC-2加振崩壊限界検証JMA 神戸波 巨大な地震動を、3方向で加振

※BCJ-L1波、BCJ-L2波は、それぞれ第2種地盤用に修正したものを用いました。

詳しいタイムスケジュールはこちら

座標系

加振Aの実験映像 2011.1.20実施

A-4加振、A-5加振は見学希望者を募っての公開実験とし、343名の一般見学者の方にご覧いただきました。「建物の中にいる人の安全確保」と「補修により再使用可能」が設計のクライテリア(設計基準)となっていましたが、実験では、大きくねじれながら揺れたものの、最終的には建物は戻っていました。

A-2加振・損傷限界検証
入力波:BCJ-L1 Y方向加振 試験体長辺L方向

A-3加振・損傷限界検証
入力波:BCJ-L1 X方向加振 試験体短辺S方向

A-4加振・安全限界検証
入力波:BCJ-L2 Y方向加振 試験体長辺L方向



最大層間変位角は、1層が1/30、2層が1/33、柱脚の移動の最大値は、長辺方向46ミリ、短辺方向44ミリ。1層の変形は、い通り > ほ通り > り通り のように偏心によりねじれて変形していました。また加振した長辺方向と直交方向にも、移動がみられました。
損傷観察では、小壁の亀裂が見られましたが、軸組には大きな損傷は見られませんでした。

A-5加振・安全限界検証
入力波:BCJ-L2 X方向加振 試験体短辺S方向



最大層間変位角は、1層が1/18、2層が1/38。柱脚の移動の最大値は、長辺方向58ミリ、短辺方向96ミリ1層の変形は、1通り > 5通り > 9通り > 13通り のように偏心により大きくねじれて変形していました。また加振した短辺方向と直交方向にも、移動がみられました。
損傷観察では、偏心の影響が集中した面の壁の亀裂と剥落が見られましたが、軸組には大きな損傷は見られませんでした。軸組には大きな損傷は見られず、土壁を一部塗り直せば、住み続けることができます。よって、安全限界は満たすというクライテリアはクリアできたことになります。