公開イベント

2010年9月12日 記録ビデオ:

2010年9月12日(日)に金沢工業大学で行われた金沢シンポジウムの、記録ビデオ・発言テキストを公開します。

挨拶
主催者:金沢工業大学建築学科教授 後藤正美 / 来賓:金沢市副市長 森 源二

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後藤正美 教授:皆様こんにちは。本日は多数の皆様にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。この委員会でこの第一回のシンポジウムを金沢の地で、まして私の大学で開催していただけるということで、非常に喜んでおります。金沢の地は少し前までは、伝統木造が1万棟残っていると言われていました。ところが毎年200棟ずつくらい解体撤去されていくということで、あと数十年経つとほとんど0になってしまうという中で、伝統木造の保存・維持、そういうときに現行の法律で補強等してしまいますと、隠れたところに鉄骨が入ったり、もしくは構造用合板が入ったりということで、前々からこういう伝統構法の補強って言うのはこれでいいのかと思っていたわけです。金沢市にはそういったところには積極的に取り組んで頂きまして、数年前からはもう少しきちんと伝統構法を守った維持、管理、保存ということで取り組んで頂いてまして、この後副市長様にご挨拶頂きますけど、そういう地でこういうシンポジウムを開催できたことを非常に喜んでおります。今日このような会を開催するに当たって、石川県金沢市建築士会等々の皆様からご協力いただいていまして、ここに改めて御礼申し上げます。簡単ではありますが、以上を私の挨拶に代えさせて頂きます。ありがとうございました。

浦親憲 教授(第一部司会進行):ありがとうございました。引き続きまして来賓の挨拶としまして、金沢市副市長森源二様よりお願いいたします。よろしくお願いいたします。

森源二 副市長:本日、伝統構法の設計法作成および性能検証実験の検討委員会のシンポジウムと言うことで多数ご来場いただきまして、地元後援といたしまして、心より歓迎を申し上げたいという風に思います。検討委員会の皆様におかれましては伝統構法の構造力学的な証明を通じて、ひいては構造設計法の作成まで持っていこうと、こういうような取り組みをしていただいていると言うことでございまして、先ほどのご挨拶にも御座いましたけれど、木造家屋の大変多い金沢と致しまして、大変感謝し、敬意を申し上げたいという風に思っております。

ご案内の通り金沢という町は、16世紀の末に前田利家公が入城されまして、築かれた町でございますけども、その後400年あまりに渡りして、戦火にもあうことなく、またそれほど大きな災害にもあうことなく、歴史的な町並みが残ってきた、大変希有な町ではないかと思っております。高度経済成長の中で歴史的な町並み、家屋というものがどんどん失われていったということがございまして、昭和43年に伝統関係保存条例を全国で初めて作りまして、助成をしたり届け出制を課したりということで、そうした歴史的な町並みを守るような取り組みをずっと進めてきたというところでございます。こうした取り組みが評価されまして、昨年の1月に国から歴史町造り法に基づく歴史的都市の第一号の認定を頂いたということでございます。また今年の2月には町並み文化財という歴史的町並みが背景にあるその歴史的な風地とともに息づいている。ソフト的な町並みという文化といったものとともに歴史的な町並みが息づいているということで、重要文化的景観という国の文化指定を受けました。これは従来でありますと棚田だとかそういうような自然的なものにもっぱら適用されるものであったのですけど、このような城下町として文化的景観の指定を受けたのも、全国で初めてということでございます。こうした金沢の町造りを進めて参ります上で、昔ながらの家屋であります金沢町家、こうしたものをいかに保存活用していくかということは、大変大きな課題となっているわけでございます。後藤先生からのお話にもございました通り、毎年かなりの数が失われているということでございます。ただほっておきますと、どうしても木造建物ということでございますと、老朽化という中で無くなっていく傾向が確かにございます。これをきちんと住んでいただきながら、また例えばお店やレストランというような形で活用いただきながら後生に受け継いでいく、そのためにはやはり耐震補強といったようなことも、避けられない課題となっているように思っているわけでございます。

そうしたことで平成19年度から、金沢市としてもそうした歴史的資産を守るための、伝統構法による建物の耐震化のための委員会を作らさせていただきまして、検討を進めて参っているところでございます。本日お越しいただいております鈴木先生、後藤先生のご指導のもとに金沢版の伝統構法建物の耐震化マニュアル、これを今年度中に何とかまとめられればなと言う風に思っているところでございます。論点も多く、中々一筋縄ではいかないところもございますけど、きちんと進めて参りたいと思っております。本日のシンポジウムを通じまして、歴史的な建造物が後生に継承されていくということ、そしてまた伝統構法の設計法がきちんと確立されますことを心より祈念し、このシンポジウムが実り良いものになることをお祈り申し上げまして、簡単ではございますけど、挨拶とさせて頂きます。本日はどうかよろしくお願いいたします。