公開イベント

2010年9月12日 記録ビデオ:

2010年9月12日(日)に金沢工業大学で行われた金沢シンポジウムの、記録ビデオ・発言テキストを公開します。

質疑応答

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大江:それでは質疑の方、始めたいと思いますので着席をお願いします。今講演頂きました4名の先生方に壇上に上がって頂きましたので、質疑をどの先生にあて質疑あるかということ、またこの委員会に対してということでありましたら、その中で答える先生に答えて頂くようにします。質疑される方の方へマイクをもっていきますので、申し訳ないですが、所属とお名前を言って頂きまして、質疑をして頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。質疑に関しましては、この委員会に関しての、今日の講演に関してなどの質問をお願いいたします。それでは質疑の方を始めますので挙手をしていただけますか。

質疑者①:埼玉から来ました、幸築舎におりましたものです。関わってきましたので質問させていただきます。限界耐力計算というそのものについてとこの実験との関係なのですが、計算をしていただくと、1尺もあるような太い柱とか大黒柱を使っている家でも、1階と2階を一質点系に置き換えて、あり得ないような結果を出してから、最終的にまた一つにしてというやり方をするのですが、そういうことも決められたやり方で限界耐力計算をするということがあって、そうやっていくのを見ながら、そんなことはあり得ないのにというようによく思っていたのです。それともう一つ仕口の、仕口が壊れない、引き抜けないことを証明しなさいという風に言われて、できればほぞが壊れないで仕口は少し抜けてきて欲しいというようなことも考えているのですが、そういうことが許されないような、壊れないことを証明しなさいというのが、限界耐力計算だと、私たちは誤解しているかもしれませんけど、そういう風に要求されるのが、ビルなどを造っているような時に使うような限界耐力計算なのだということを見てきて、この研究が限界耐力計算を基本にしてやっていかれることを考えると、その辺の片だなと思っている部分を木造の方で、国で決めている限界耐力計算の仕方があるのを変えて、木造用に変えていける前提でやっておられるのかどうか、ということをお聞きしたいと思います。

大江:ありがとうございます。斎藤先生お願いします。

斎藤主査:今の質問で、必ずしもよくわからない部分もあったのですが、限界耐力計算という名前のどうしてそういう風な名前を付けられたのかということを申しますと、応答、地震時の例えば変形であるとかというものを割と簡単な方法で計算するには、どういうやり方がいいのかというもので計算したのが、施工令などで示されている内容です。ですから詳細については、大黒柱をどう扱うかとか、そういうことは特に何も書いていないのです。大きなやり方として、一自由度系にするということだけが書いてあります。もちろん一自由度系にして評価をするのですが、最終的にはまた元の、2階建てならば2質点系に戻すのです。一自由度系にして終わりではありません。先ほどは申し上げませんでしたが、今やっている限界耐力計算の方法は、これは計算方法そのものの精度を上げなければならない部分もあるわけです。だからその元になっている、今の要素実験だとか、今後やる実大実験だとかを入力して、より精度の高いものにする必要があるのですが、それはそれとして、評価の仕方そのものも、もう少し精度を上げられないかという検討も当然余地が残っていると思っています。その中で個々の問題についてどこまで使えるかというのは、まだ今こういう風にしますと具体的な話はできませんけれど、今後の検討の中でやっていきたいと思います。

鈴木委員長:もう少しフォローしますと、個々の問題と、太い柱だとさきほど長瀬さんも仰ったような柱の傾斜復元力も考慮できますので、それは入れていただいていいと思います。それから、仕口・継手などの細かい話は2007年度までは、建築基準法の改正までは特にそのようなことは言われなかったのですが、適判が入ってきて、適判員がそういったところの、特に適判の方々も、伝統構法が分かっておられるわけではないですから、一般的に使われている仕口がそんなにすぐ壊れるものではないのですが、中々その辺に関しては理解して頂いていない場合が多いのです。それでそういうこともふまえて、後藤先生の方の部会で、仕口のそういった実験もこれからどんどんやっていきますので、データも公開しますので、そういったものをこれから使って頂ければと思います。それともう一つ、現在の建築基準法の下での限界耐力計算の扱いに関して、別途設計マニュアル検討ワーキングというのを作っておりまして、現行の設計法で問題があるであろうということは検討いたします。斎藤先生が先ほどご説明されたのは伝統構法に適した設計法として、これから作っていこうというお話でしたので、少し内容が違ってくると思います。

大江:よろしいですか。先ほど立ち上がられた、黄色い服の方、どうぞ。

質疑者②:福井の藤田設計室と申します。今日色々な話を伺いまして、大変参考になりました。ありがとうございます。斎藤先生にお話を伺いたいのですが、このような伝統的な建物をこれから造る、あるいは診断するということなのですが、その耐力の検証なり、設計を検討するという行為は意匠ではないと思うのですが、それで今解析方法ということに着目した場合、限界耐力計算であるとか質点系を考慮した動的な時刻歴応答解析とか、かなりレベルの高い解析法を習得していかなければならないという問題点があるかと思います。そういった場合に、伝統的な建物ではないのですが、小住宅、プレハブメーカーのものだと思いますが、そういったところで住宅用の免震装置というデバイスも開発されておりまして、私が考えるのは、地震に強い建物を考えるならば、いっそのこと免震にしてしまうのが一番簡単ではないかと思いますが、そういった国の施策で耐震化が叫ばれているにもかかわらず、そういった住宅関係の免震というものが普及していかない背景というものについて、先生のお考えがありましたら、少しお伺いしたいなと思います。

斎藤主査:中々背景といわれると難しい物がありますが、多分、住宅を建てる方について、免震にするメリットとそのための工費を天秤にかけて、それでそこまでやらなくてもいいかということはどこかである気はしますけど。一方で集合住宅、所謂マンションみたいなものは、免震のマンションというのは作られているわけです。ただ免震のマンションも兵庫県南部地震のあと、数年はかなりそれを売り物にして売れたのです。ところが数年たって、飽きが来て、売り物にならなくなったと。だから非常に住宅を造る、買う側の意識というのは変化しているのではかと。絶対免震にするんだということではなくて、意外とどこかで地震というのは、来るといってもやはり来ないのではないかということが心の内にあって、中々そういう風にならないのではないかと、答えにもなっていませんが、そういうように思います。

大江:他に質問のある方、挙手をお願いいたします。はいどうぞ。

質疑者③:小西構造設計の小西です。斎藤先生にお聞きいたします。講演のなかで、減衰について注意してくださいというお話が御座いました。減衰の件ですけれど、限界耐力計算ですと等価減衰ですが、減衰は通常は定常振動を元にしたものということになっていると思いますけれど、先ほどの京町家のビデオを見ていると、あまり心配しなくても良いのかもしれませんが、過度振動といいますか左右に揺れるような定常のような状態にならない、特に変形が大きくみてるところがございますので、そういう風なところで等価の減衰というのは、下がってくるような恐れはないのかということが一つです。それからP-δ効果なのですが、限界変形角が1/30〜1/17というお話が少しありましたが、それだけ変形がありますと、ベースシア係数でいえば何割かという感じになるのではないかという風に思います。後藤先生の方の、履歴の検討の方でも、P-δ効果を考えないとまずいと、そのことで何かP-δ効果を考えて、低減かなにか、低減かどうかはわかりませんが、そういうような方向で何か考えておられるかどうかという2点ですが。1点目は減衰がそれでいいのかということと、P-δ効果をどのように考えておられるかということです。その2点です。よろしくお願いいたします。

斎藤主査:減衰は、限界耐力計算でいまやっているのは最初の勾配で戻ってくると、それでスリップ型だということでこの面積を出していますけど、もう少し面積が減る方向に行かないとは言えないです。それと元々もっている内部粘性減衰が先ほどの長瀬さんの話の中で、唐招提寺を測定したら2〜3%だったという話がありますが。だから粘性というのは、私は昔から例えば超高層などでも、減衰はどう考えたらいいのかということは非常に悩みの種なんですが、元々もっている減衰、それから高次のことに対する減衰、色々な減衰、結局未だ明らかになっていないことの一つが減衰ではないかというように思っています。ですから、例えば、計算をやってみてかなり大きな変形まで考えて、計算では減衰が20%超えましたという話になったとしたら、それは減衰を大きく取りすぎているのではないかという話になっているのではないかと思います。それはまさに工学的判断といいますか、ある一つの計算をやったら算出されるのですが、やはりどこかで歯止めというところがあって、それはやはり減衰を取りすぎだから、もう少し控えめなところで評価しようと。そういう結果に対する判断力が大事だと思っています。よく分からないことに対しては、少し控えめというか、そういうように評価すべきではないかというように考えています。だからといって、どうしたらいいのかというのは、これが正解ということは出てこないのではないかという気も一方ではあります。非常に悩ましい問題であるとは思います。

質疑者③:定常振動で履歴ループを描いて、それに合ったもので等価減衰を出していますよね。そういう状況は、今の木造ですごく変形が大きくなるところまで考えているわけですけれど、それは問題にならないと考えてよろしいのですか。一方向にずれていくということを考えなくても良いのかということです。等価の減衰を出す時の履歴のループがありますけれど、そのループが最後に同じに変形した状態の面積を出して、それから等価減衰を出しているのですよね。そういったことが今の木造で、例えば非常に変形が大きくなっても、それほどそういった状況は気にしなくても良いということでしょうか。例えば現行の基準の増分解析でやりますと、1/100〜1/75くらいのところで一応、見るわけですけれど、今の場合は1/17とか、大きいところまで、もっといくのかもしれませんけど、そういう状況ですと、変形が繰り返し繰り返しという状況で片方向に行ってという状況が、今考えている状況と違うのではないかと、そういう心配はないのでしょうか。

斎藤主査:今の話も、実は今回の実験の中で、減衰も、先ほどの説明の中で、所謂詳細な3次元の部材レベルの解析だとか、そういう応答予測をやっていますが、一方で当然限界耐力計算においても、どういうのが実際の応答に近くなるかということをやるわけです。その中で当然今の減衰の話も、今までやっているようなやり方でいいのか、今仰ったように繰り返しでどんどんいったときに、それをどう評価したらいいのかということも出てくるかと思います。やはりこの実験の前と後で、実験の前にも色々スタディをして、後にも結果と合わせて、最終的にどう評価するのがいいかということが出てくるかと思います。

質疑者③:ではP-δ効果は如何でしょう。変形が非常に大きくなりますので、1/15とかそのような、多分ベースシア係数で何割というオーダーで、層モーメントが増えるのではないかと思うわけです。それをそのまま無視してしまうと、それは何らかの手だてをするようなことは、後藤先生は何か言われたような気がするのですけど、何かお考えがあるのでしょうか。

斎藤主査:P-δ効果の話ですか。それは一応1/30を超えると、P-δ効果は何らかの方法で検討するというのは当然出てくると思います。

質疑者③:どうもありがとうございました。

大江:どうもありがとうございました。何か他に質疑の方はありますか。はいどうぞ。

質疑者④:埼玉から来ました、幸築舎の山口と申します。限界耐力計算で4棟ほど計算してもらっていたのですが、今の時点では近畿版といわれる計算法しかないと思います。それで、近畿版を作られた先生方もいらっしゃるので、そのことに関しても聞きたいのですけれど、現時点で、先ほども大黒柱の質問もありましたけれど、大黒柱を使っても1階と2階の変形差がかなり出てしまう、2階ほとんど変形しない建物で1階だけ大きく変形してしまうというような、現実にそういう計算結果が出てしまいます。尺2寸もあるような、太い柱を使って、1階と2階の変形差がそれだけあるということは、計算自体が今の時点でおかしいのではないかということを考えているのですけれど。それと、今回の実物大の振動台実験の試験体は総2階のような建物なんですが、私達が頼まれた時には、ほとんど総2階ということはありません。2階が大きくて1階が乗っていると、おそらく2階に関しては、1階の下屋が効いてきて、2階の変形というのはそれで抑えられるような効果というのがあるのではないかと思うのですけれど、そういうのも計算に入りません。おそらく、これから設計法を作るということで、今ある近畿版よりも良い物ができるのだと思っているのですが、あと使う材料によってかなり計算結果が違うと思います。伝統構法は材料が占める割合というのがかなり大きいと思います。目の粗い杉を使ったもの、ケヤキの良い物を使ったもの、ヒノキの大黒を使ったもの、結果がかなり変わると思います。もう一点ありまして、これは計算自体を否定してしまうことなのですが、大工の施工精度、技術の差、こういったものをどういうように計算に入れていくのか、実際に既に研究されていて、熟練が作ったものと、大工になりたての人が作った継手・仕口では強度に大きく差が出てしまうというような実験結果も出ています。そういうものもどう計算に、計算自体がそれで成り立つのかということをお聞きしたいのですが。最後にもう一点です。京都のフォーラムの時に、お聞きした答えがなかったものですから、お聞きしたいのですが、これは大江さんに聞けばすぐわかることだと思います。建築研究所と共同研究でやっていくということを建築研究所側はいっておりますが、そのことについては何らかの確認をされたと思いますので、どんな風に共同研究を進めていくのか、建築研究所も伝統構法の実験をして、それを基準法の中に組み入れていくために実験をしていくと、建築研究所側には、こちらと共同研究ですという答えをもらっています。それは確認されていると思うのでご返答いただきたいのです。よろしくお願いします。

大江:今最後の質問の方を私が先にさせていただきますが、現在の委員の方に、建築研究所の方に入って頂いておりますので、そういう形での共同研究ということだと思います。我々の委員会の方にも解析結果、そういったものも建築研究所で実験されたものを応用して、解析のチームで実際に使わせて頂いていると、そういう意味での回答ではないでしょうか。そういう形で、こちらとしては考えております。それ以上の回答が必要であればお答えいたします。

質疑者③:うちが確認申請を出しているときに、住木センターの方からマニュアルが出てしまったという経緯があるのです。片方で実験をやっている最中に本が出てしまったので、余計にストップしたということがあったものですから、並行して研究研究所で実験をしていきますということを、事業仕分けで理事長がいったのです。そういうことが片方で行われていると、一生懸命こちらで実験をして解析をしていこうと思っているのに、突然知らないうちにまたマニュアルが出されるのではないかということがあって調べているというか、実際そうことがあったものですから。だからこれはどういう意味なのだということを心配していっています。

大江:これは鈴木先生にお願いいたします。よろしいでしょうか。

鈴木委員長:私どもの検討委員会と同じようなことを、建築研究所の方でもやっておられるという話でしょうか。伝統構法の色々な課題がありますので、各大学や研究所でたくさんされていることと思います。それと私ども検討委員会は、設計法を作るということが主な目的です。それに必要なものに関しては、色々国の方からお金も頂いて、実験・調査、そういうことでやっていきます。ということで、そこに使われているような色々な要素といいますか、技術も必要なのですが、それに関してはここでたった3年間なのですね。それらをこの検討委員会の中で全てを揃えるというのは難しいです。ということで各大学だとか、各研究所で、そこでやっておられるような研究も、私どもの方に頂きながら、また過去に発表されているものを我々の方で勉強しながらという形でやっておりますので、必ずしも同じようなテーマで、しかも国からお金を頂いてやっていたらおかしいというように私は思います。だから特に建築研究所だとかそういったところは研究目的でやっておられますので、それで違った側面から、色々な研究者の方々が一つの課題だったとしても、その見方も扱い方も違いますので、それはそれで良いと思います。それを特に国の研究所でやっておられるようなことですと、それはきちんと私どももそうですけれど、実験データの公開ということはやっていきますので、国の研究所の方がやっておられましたら、それも公開していただいて、私どもとか設計者の方々がそういうようなことに役立てられたら良いというのが基本だと思います。

質疑者③:それはわかるのですけれど、それなら良いのですけれど、いつもダブルスタンダードでマニュアルが出来ると、国は片方の、国系の機関が作ってものだけを認めるということもあって、それで確認を通すことに苦労してきたので、そういうようなことが起きるのではないかということを心配していっています。

鈴木委員長:伝統構法の今から出てくる設計マニュアルが2本立てになるとか、それはないと思います。国交省の方で、それに関してはこちらの方がまとめていくと、そういう形で今やっていますので、例えば建築研究所の方からそういうマニュアルが出てくるとは私は思っていません。

大江:現実に、今回の委員会に関しましては、木造振興室だけではなくて、建築指導課の方も中に入って頂いて、委員会をやっておりますので、いつかそういったアウトプットをきちんとした形で出していけるようなことを、当然我々も考えておりますので、その辺の協力をしながらやっていくつもりでおります。よろしいでしょうか。後の質問がとんでしまいましたけれど、最初に言われた3つの質問、3つありましたよね。最後で4つでしたよね。一つ目がまず、斎藤先生ですね。

斎藤主査:まず大黒柱、柱そのものは他の柱に比べると大きいのですが、結局はそこに入る横架材のめり込み抵抗、そこの問題になるわけです。だからそれが全体にどのくらいの影響を及ぼすかということで、結局その大黒柱があることで、1階2階の、今仰ったように、何であのような結果が出るのだという、それは場合によっては出る可能性もあると思います。これは今まで、例えば京町家の新築で、大黒と小黒という大きな柱が中にあって、そういった実験結果も既にあるわけです。それを見ても、その柱の影響がすごく顕著に出ているという結果ではないと思っています。どちらにしてもその通し柱というものを、どういう風に全体の耐震性能の中でどういった風に評価するかというのは、一つの問題ではあるかと思います。大黒柱も、ずっと上までいっているのが通し柱ですから。

大江:ご質問があればしてください。今の回答でたらなかかったならですが。

質疑者④:すいません。いまいち納得がいかないのですが、2階が全く変形しないで1階だけ1/20だけ変形してしまうというようなことが、尺2の通し柱を使って、他の通し柱は7寸使って、そういうことがあるのでしょうか。それと同じような関連で、2階の下屋がついているのに、そういうところが計算に入っているならいいのですが、下屋がついていることによって2階の変形が抑えられるような効果というのは、ないのでしょうか。それと材料の問題と、大工の施工技術の差というものを、どのように計算に入れていくのかという4点を聞いたのですが。

斎藤主査:ですからそれは例えば、1階と2階の変形が大きく違うと、その時に柱がどういうようになっているかというチェックをすればいいわけです。ようするにそういうことが起こらないという話ではなくて、その時に柱がどういうことになっているかということをチェックすれば良いというように思います。施工精度に関しては一応、一定の施工精度で行われているという前提で計算しています。ですから、もし施工精度が悪くて、そういった場合にどうなるかというのは、例えばほぞがきちんと出来ていないとか、色々な意味で施工精度が悪いと、初期剛性が低くなるなど、色々なことが起こる可能性があります。これは正しい、計算にどういう条件でのせるかということになると、直接それを条件として計算するのは難しいと思います。

後藤主査:もう一つの質問で、樹種、材種の問題ですが、先ほどの接合部の実験でも、杉、ヒノキ、松系という形で、樹種を変えながら、なおかつ寸法を変えながら、たまたま小松先生が所用でいらっしゃらないのですけれど、材料部会と連携を取りながら、木材のどういうような、木材の管理、どういう管理でどういう接合部であればどういうことになるかという辺りも、視野に入れながら検討して、できれば色々な樹種、乾燥状況など、色々な形で、組み込まれるような形でしたいというように取り組んでいます。

大江:今回の試験体がなぜ総2階かという話も。

後藤主査:今年のEディフェンスの実験は、今斎藤先生達が提案されている今後の課題をポイントに絞って実験をするというのが一番大きな課題なのです。今伝統構法として建てるならこういう家というのではなくて、柱脚が滑るならばどうなるかとか、壁のバランスがどうだとかいうことで総2階という形で、実験のデータが取りやすいという形の構成をしていますけれど、今麓先生がいらっしゃいますけれど、構法・歴史部会で検討して頂いて、来年か再来年に、構法・歴史部会としてこういう建物だというのを提案して頂いて、それを実験して検証するということも計画の中には考えておりますので、もうしばらくお待ち頂きたいという風に思います。

大江:よろしいですか。材種の件につきましても、材料部会というところが色々な検討をしておりますので、そういった可能性を皆が色々考えております。あと会場の方で質疑はありますでしょうか。

質疑者⑤:石川県のフロム構造計画、竹村と申します。鈴木先生にお伺いしたいと思うのですが、今回の石場立ての実験について興味深く聞かせて頂きましたが、M-0効果がありますと、中々滑らないという風に言われましたけれど、当初のEディフェンスの実験の映像を見ていますと、滑ったりしていますけど、あの時には鉛直振動とか、入っていると思うのですが、それによって吹っ飛んだりして摩擦が0に切れてしまうということ、摩擦が0になくなってしまうという状況ではないでしょうか。

鈴木委員長:今言われたM-0効果と上下動で摩擦が切れるということは別なのですが、実は上下動を入れた、柱脚部だけの小さな模型、それから1×1スパンの軸組の模型、あるいは京都大学の振動台実験で上下動を入れたものもやっております、水平動だけのものと、上下動を組み合わせたものとで、どういうように上下動の影響が出てくるのかということなのです。現実的にいくと、上下動の効果というのはそんなにはありません。普通の感覚からするとおかしいかもしれませんが、むしろその上下動の影響によって、摩擦力は逆に増える方向に出てくるということで、上下動で摩擦が切れるということはほとんどないです。上げてみると1Gかかっていますので、それがベースで100galとか200galのこういうような変動なのです。そうすると建物全体が一度に浮き上がるということはまず考えられません。そういうこともあって、ただ上下動の影響のように皆様がよく思われるのは、地震で大きくものが飛び上がります、上下動で飛び上がっているのではなくて、水平動で、バネ力がそこに蓄えられて、足下が取れたという時に、それでとんでいくのです。ということで、ほとんどが水平動の効果なのです。飛び石現象だとか、マンションのピアノが飛び上がって天井にぶつかっただとか、そのような実際の地震のときに、そういったことも観測されていますけれど、ほとんど上下動の影響ではないのです。

大江:あと会場の方で質疑ありますでしょうか。それでは。

質疑者⑥:この質問は、麓先生か後藤先生だと思うのですが、私も福井で、たまに木造の計算を頼まれることがあるのですが、計算が必要な木造の建物ということになりますと、どうしても積雪荷重を考慮しなければならないと。福井も2M地域、そして山の方になりますと、3Mという積雪が設計のなかでクリアしていかなければならない問題になるのですが、そうなると、まず積雪荷重に耐えるような仕口ということになると、伝統的な仕口といわれる断面に収まってきません。部材の断面も非常に大きなものになってくるというのが、課題がありまして、これからこの伝統的構法の、地震についての設計法というのが進められているのですが、私が思うに、伝統的な構法を使った木造建物が、残っていくためには、法的に何らかの緩和をするか、積雪荷重にも耐えられ、地震荷重にも耐えられという仕口がないと駄目なのではないかと思う訳なのですが、そこら辺で何かご意見ありましたらお伺いしたいなと思います。

後藤主査:積雪荷重は雪国でいると、かなり気になる話ですが、鉛直荷重で伝統構法で家がつぶれるという事例はあまり聞きません。たまたま2年くらい前に、石川県の白峰というところで、積雪、家がつぶれて、お年寄りが無くなったという事例があるのですが、やはりそれなりの原因があるわけで、ずっと一人住まいでメンテナンスができていないとか。普通、私は新潟の出身で、積雪6mという地域に住んでいたこともあるのですが、雪下ろしという習慣があったので、そのままというわけではないですけれど、私の感覚ですと、積雪に対する継手・仕口というもので、伝統構法で特殊なものをわざわざ開発しなくても良いのかなとは思います。ただし、問題は積雪荷重を見込んだ地震荷重というのはもう少し検討させて頂かないと難しいところもあるのです。確かに積雪、石川県でいうと1.5mを乗せて限界耐力でやろうとすると、少し厳しいところもありますので、考えなければならないところもあるのですけれど、鉛直荷重に対する仕口・継手ということに関しては現行のままでいいのかなというように思います。

質疑者⑥:現実的に、積雪2m地域で2mまで雪を乗せるというのはあり得ないわけなんですけれど、今の設計体系、法律上は2mをのっけても壊れないように4mのっけても壊れないようにということになっているところが問題ではないかということなのです。

後藤主査:積雪の時の、雪下ろしの低減というのは福井ではどのように扱われているのですか。

質疑者⑥:例えば、住宅などの周りに雪下ろしのスペースがある建物ならば、いいというようになっていますけれど、ある程度計算が必要な建物となりますと、屋根高が高かったり、規模が大きいということで、屋根の雪下ろしができない建物は低減できないわけです。ですから実際設計において、1mしか見込まなくて良いということはなくて、2m3mを見込んだところで設計をしなければならないというところの問題点です。

後藤主査:この委員会とは別として、私のライフワークの中の一つとして、積雪荷重に対する木造の耐久性、耐力というものを計算したりはしていて、小屋組の載荷実験ということで、鉛直荷重に対して実験したりしているのですけれど、積雪荷重を想定して実験室で実験してもまず壊れないのです。もう少し吟味してからお話できればとは思いますが、鉛直荷重に対しては、設計の方がかなり低減を見ています。例えば積雪のときは、係数を半分に落としなさいとか、色々なところで低減をかけていますので、実際と大分違っていると、その辺はもう少し検討課題として考えます。

麓主査:構法の方で私の名前が出ましたので、設計法ということではなくて、雪の多い地域で仕口・継手が違うかどうかということについて申しますと、継手・仕口そのものはあまり変わりないと思います。小屋組の加工方法であるとか、多雪地域の屋根の考え方というのも、勾配をきつくして自然に落ちることを考える伝統的なやり方と、もう一つは屋根勾配をゆるくして、人が乗って適切な時期に雪下ろしをするという方法があると思うのですが、そういうことで、小屋組の架構方法については差が出てくるとは思います。個々の継手・仕口がどう違うかというと、それはそれほど違いはないように思います。

大江:よろしいですか。ありがとうございます。特に質問がなければ、30分超過しておりますので、これで終わらせて頂こうと思いますが、よろしいでしょうか。すみませんが、帰りにアンケートを受け付けの方に入れていただけませんでしょうか。今後、この委員会としましては公開実験、実物大の公開実験が来年の1月にあります。その前に要素実験の方も来週もやっておりますので、京都大の防災研ですとか、ホームページの方を見ていただけますと、そういった情報を得られます。また、メルマガの方も発信しておりますので、登録していただければ、わかり次第その速報を出しておりますので、よろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。失礼いたします。