公開イベント

2010年9月12日 記録ビデオ:

2010年9月12日(日)に金沢工業大学で行われた金沢シンポジウムの、記録ビデオ・発表スライド・発言テキストを公開します。

E-ディフェンスの震動台加振実験について
鈴木祥之 検討委員会委員長

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発表スライド

※スライド後半の一部で、ファイル破損のために表示が
 一部崩れている箇所があります。ご了承ください。

鈴木祥之 検討委員会委員長:お疲れの所ですが、最後の発表ですので、我慢してお聞き下さい。
それでは私の方からは、今年度Eディフェンスで実験を致します。その実験の目的とどういうようなことを実験するかということをお話させていただきます。過去に、伝統構法の建物と言うことで、Eディフェンスで実大振動台実験を既にやっております。それで先ほど斎藤先生の方からご紹介がありましたが、京町家の実験です。これは2007年にやりました伝統的な軸組の実験、それからこれは2008年にやりました、A棟B棟とか言われている振動台実験のものです。斎藤先生の方から、伝統構法は色々な課題を持っていますというお話がありました。もう一つ設計のクライテリア、伝統構法としての設計のクライテリアとして、一応中地震に対しては損傷の限界を、大地震に関しては安全の限界をということなのです。これは建築基準法レベルの地震動の話です。能登半島地震だとか新潟県中越沖地震だとか、そういう形で震度7クラスの地震が起こっております。これは建築基準法を超えた巨大地震というように考えられるわけです。それがたびたび起こっていて、住民の皆様方からそういった地震にも耐えられるのかというお話を聞きます。ということで、そういった大地震に関しては、建物の中に住んでおられる方の安全性を考えましょうというように考えております。

伝統構法の構造力学的な課題としまして、ここにありますように石場立ての柱脚が移動するという問題があります。それから伝統構法ですと、床構面が必ずしも剛ではありませんので、水平変形をしますということを設計の中できちんと評価できるのでしょうかと、それから先ほど後藤先生もお話しましたように仕口接合部だとか、そういったところの性能の問題があります。ということで、今年度のEディフェンスではまず、石場立てを含んだ建物の試験体を作って、それで検証をしていこうとしております。まずは柱脚の仕様です。足下が滑ったら上部の建物に関して、安全なのかといったところを検証していきたいと思います。それから水平構面と偏心の問題、これについても半剛床的なそういった床構面を作って、それで実際に実験して検証していきます。それから最後の、建物が崩壊しないか、所謂伝統建物が崩壊しないということに対しても検証したいと思います。以上大きな目的としてこの3つがございます。

柱脚の仕様に対しては、先ほど斎藤先生の方からお話がありましたので、これは割愛します。これは2007年にありました振動台実験なのですが、こういう石場立ての建物で実際にビデオをご覧頂きますと、見ていただきますとわかりますように、3方は壁がなくて、奥側だけに壁がある、すごく偏心していて、わざとこういった形で実験しているわけですけれど、これはこの建物の滑りの状況なのですが、それで今左手側に見えるのが先ほどの奥側に見えていたもので、全面壁が入っています。その全面壁の下のところの赤丸の柱脚の部分です。揺れています地震動はJMA神戸の100%ということで3方向で加振しておりますが、こういうように柱脚がすごく移動することが分かっていただけると思います。その時の建物の応答等がここにありますが、一番下にありますが、振動台のテーブル上での応答で、一番上が桁レベルでの応答と言うことで、これを比較してご覧頂きますと、それほど増幅していないというか、むしろ少し小さいくらいかもしれませんが。ということで、柱脚が滑ることによって、上に地震力が伝わっていないということがわかるわけです。こういうことで、免震の効果だとか、そういうように言われたりもするのですが、斎藤先生も言われていたように、私どもはこの柱脚の滑りを所謂免震だというようには考えていないわけです。ということで、免震と言われている、上の方に地震力が伝わらないという効果があるのは確かです。そういったことを設計の中できちんと捕らえていけるかということなのです。

ということでまず試験体の1、2に対して柱脚が移動しない設計は可能なのかということで、要は、石場立てで足下を止め付けていないのだけど、柱脚は滑らないでしょうというようなことを考えているわけです。ではこれはどういう意味合いかといいますと、先ほど斎藤先生からお話がありましたように、建物が2階建てですと、普通はこういった2質点系にモデル化します。実は2階部分の質量はここにあります。1階部分の質量はここのM1です。こういうふうな形で振動系を構成するのですが、実はこの下の部分、ここの質量M0だとします。そうすると、設計の時のベースシアというのは、この1層のせん断力に対して、質点系の重量、こちらの重量です。要はM1とM2です。M0については全く考慮していないのです。ところが建物の滑りということになると、建物全体の重量がかかってきます。ということで、総重量としてはM1M2にさらにM0が加わるわけです。ということでこのM0が考慮されるわけです。そういう風な概念を使って、伝統構法の建物、平屋建て、2階建て、どのくらいの重量があるのかということで調べていきますと、質点系のM1M2を足したものと、全重量に関しては1.2倍から.14倍くらいあるのです。ということでこのM0効果が働きますと、例えば0.4のベースシアで計算しても、実は滑りの関係のベースシアでいくと、ちょっと複雑になるのですが、建物のM0が0だとしますとベースシアが0.43、少しずつ先ほどのM0を大きくしていきますと、その礎石の上でのせん断力がこう変化していくのです。この値と摩擦係数の差ということで滑るのか、滑らないかというのが決まってくるというように考えています。そうしますとM0効果ということで、かなり大きなベースシアで計算しても、足下のところではそんなに大きなせん断力は働きませんと、いうことで、我々はこれをM0効果と呼んでいるのですけれど、そういうような効果が出てきます。

ということで試験体No.1、No.2、これは平屋モデルですけれど、足下の浮いたところの礎石を、摩擦係数の違うものを置くだとか、あるいはこの床の部分の重量を変化させながら、M0効果を見ながら、こういった建物が滑るのか滑らないのか、それともう一つは、この建物の耐力が大きければ滑っていくということになります。ということで、建物の耐力も変化させながら実験をしていきます。ということで、耐力が高くなれば滑ります。耐力が低ければ滑らないですと。あまりに耐力が小さければ、地震動で壊れてしまうということになります。次に、今限界耐力計算だとか詳細な3次元解析だとかそういった解析をやっていきますけれど、本当にこういった伝統構法の建物の地震応答予測が可能なのかということも検証して、それには先ほどの水平構面の変形であったり、ねじりであったり、1階と2階のバランスであったり、というようなことで、2階建てのこういうような試験体を作りまして、こちらの場合は土台に足下を止め付けますと。先ほどのようにこれに柱脚のすべりを入れますと、さらに複雑な解析になって、それの解析手法の検討としては少し難しいということで、単純な形、足下を止め付けた形で検討していきます。というのが試験体No.3です。

最後に、建物が崩壊しないような設計は可能なのかということと、合わせて先ほどの水平構面の変形、あるいは偏心、ということも検証しましょうということで、試験体No.4。こちらは、石場建てで、なおかつ、こういったところに、伝統的な土壁を使ってやります。現在、試験体No.4から制作しております、というのは土壁ですので、乾燥時間も含めてということで、現在、荒壁がついて、まもなく中塗りが入るところというような状況です。

9月の14日からですけれど、こういうような柱脚の滑りの検証実験ということで、これは去年やったものなのですが、今年はこれに対して、2×1スパンの、もう少し大きな試験体になりますが、足下の礎石の種類を変えて、摩擦係数がどうなのかということをまず調べようというところです。そしてその結果を以てEディフェンスの実験をやろうと、そういう風に考えております。以上です。