設計法部会
部会概要

設計法部会 主査:斎藤 幸雄(広島国際大学工学部建築学科・教授)

伝統構法のすぐれた変形性能や土壁以外の耐力要素も正しく評価でき、伝統構法にふさわしい設計法をつくることが私の目標です。まずは今、現実に滞っている伝統構法の現場実務に配慮し、「伝統構法を活かす耐震設計マニュアル」に立脚した実務者に使いやすい設計法を緊急課題として手がけてゆきます。

※2004年4月 学芸出版刊。木造軸組構法建物の耐震設計マニュアル編集委員会 編著。発刊以来、伝統構法関係者によく用いられている。通称・関西版マニュアル。

部会の目的

伝統構法の構造力学的に未解明な柱脚の移動や水平構面の変形などについて実験的、解析的に検討し、伝統構法の地域性のある構法や構造特性を考慮し得る伝統構法に適した設計法を構築するとともに、設計法の妥当性を振動台実験で検証する。
また伝統構法の設計に必要なデータベースを作成・公開し、実務者が使いやすい設計法とする。さらに、実務者から要望がある簡易な設計法の提案も行う。
なお確認申請・適判円滑化のための設計マニュアル技術検討WGと協力し、当面の課題として実務者の負担の軽減を図る。

  1. 伝統構法の構造力学的に課題である石場建ての柱脚の移動や水平構面の変形など建物の応答や耐震性能に及ぼす影響についてE-ディフェンスでの実大振動台による検討を行う。また、限界耐力計算と時刻歴応答解析との比較検討、他の設計法(壁量計算、保有耐力計算など)との比較検討を行い、設計法に反映する。
  2. 伝統構法の汎用型でなく、実際に建設が見込まれる伝統構法の住宅に的をしぼって設計法の検討を進める。具体的には建築物の規模は4号建築物相当とする田の字型平面住宅および町家型住宅をモデルとする。これらのモデル住宅に関する検討結果については、平成24年度にE-ディフェンスでの実大振動台で検証を行う。
  3. 限界耐力計算を行う場合に、現在、課せられている荷重外力(固定・積載・積雪・風圧力等)に対する構造安全性の検討項目ついて検証を行い、必要なら仕様規定的なものを考慮することで、限界耐力計算に伴う構造安全性の検討から除外する特例措置または検討内容の軽減を検討する。検討の成果を適宜、確認申請・構造計算適合性判定に反映させる。4号建築物相当の住宅については、早急に検討することで設計者の負担軽減を図る。
  4. 伝統構法木造住宅以外の寺社建築物など伝統構法建築物についても事例的に限界耐力計算による設計法の検討を行う。
  5. 設計に必要な構造要素の復元力特性などを実験的、解析的に評価し、復元力特性の評価法を検証し、設計用データベースを作成し、公開する。また、伝統構法に特有な仕口・継ぎ手など接合部の構造性能の検証法を開発し、設計法に生かす。
  6. 伝統構法木造建築物の限界耐力計算による汎用設計法について検討する。柱、横架材の構造性能、仕口・継ぎ手など接合部の構造性能の評価法、各層の復元力特性の評価法、柔床など水平構面の変形、偏心、柱脚の移動による応答や耐震性能への影響の評価法について検討し、設計法に組み込む。また、損傷限界・安全限界のクライテリアについて検証を行う。
  7. 伝統構法木造住宅(4号建築物相当)用の仕様規定を検討し、構造設計法として限界耐力計算によらなくても良い簡易な設計法について検討する。
  8. 実際に建設が見込まれる、田の字型平面住宅および町家型住宅をモデル住宅としてE-ディフェンスにおける実大振動台実験を実施して、限界耐力計算による汎用設計法や簡易な設計法の検証を行う。