検討委員会の概要
検討委員会の方針 (サマリー)

検討委員会の目的と方針

鈴木 祥之(立命館大学 立命館グローバル・イノベーション研究機構 教授)

石場建て構法を含め、実務者が使いやすい伝統構法の設計法を

伝統構法あるいは伝統的構法(以後、伝統構法)の木造建築物の設計法を確立するために、「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験」検討委員会が平成20年度に設けられ、伝統構法の設計法についての検討と実大振動台実験とともに、伝統構法に関する調査、伝統構法に用いられる材料に関する実験等の検討がなされてきた。平成22年度からは、これまでの調査、実験などの検討結果を踏まえ、石場建て構法を含む伝統構法木造建築物の設計法について検討を行い、実務者が実践的に使える設計法の作成を目指す。

それには、

伝統構法の構造力学的な解明のもとに

伝統構法には、構造力学的に未解明な部分がある。特に仕口・継ぎ手接合部のメカニズムと性能、礎石建て(石場建て)の柱脚の移動、床などの水平構面の変形などについて実験的、解析的に明らかにする。

伝統構法の良さを生かして

伝統構法は、地域性が豊かで優れた意匠性を有しており、構造力学的には大きな変形性能を有する特徴がある。また建設時のエネルギー消費が極めて少なく、木材そのものが再生産可能な生物資源であるなど環境共生に適しているという特質を有している。このような伝統構法の良さを生かした設計法を構築する。

現行の建築基準法に囚われない自由度の高い設計法

建築基準法、特に施行令第3章第3節の木造の規定は概ね在来工法に対する仕様規定であり、伝統構法には適していない。従って、これらの規定には囚われることなく、壁要素のみならず柱-横架材による軸組要素も加えて、自由度の高い、合理的な構造設計法を構築する。

設計に必要なデータベースの構築と公開

伝統構法に特有の継手・仕口接合部や土塗り壁など構法仕様の地域性を考慮して実験的、解析的に検討し、伝統構法の設計に必要な構造要素の復元力特性などのデータベースを作成し公開する。
以上から、実務者が使いやすい伝統構法の設計法を作成し、伝統構法にかかわる実務者、行政担当者などへの普及を図る。

伝統構法の危機的状況を打開

現在、伝統構法の建物では確認申請の受付や工事の着工が著しく減少し、伝統構法は危機的状況に置かれている。このような状況を踏まえて、確認申請・構造計算適合性判定の円滑化のための設計マニュアルの技術的検討等、当面の課題についても早急に検討を行い、伝統構法の危機的状況を打開する。